Point詳解 不整脈薬物治療ガイドライン(2020年改訂版) 第1回 不整脈薬物治療ガイドライン:全般的な改訂点のまとめ

Point1 クラス分類とエビデンスレベルの整備、心房細動の診断・治療全般
Point2 抗凝固療法の選択と抗凝固療法中の管理

監修
清水 渉 先生

日本医科大学大学院医学研究科
循環器内科学分野
大学院教授

クラス分類とエビデンスレベルの整備、
心房細動の診断・治療全般

2020年3月、日本循環器学会による不整脈薬物治療ガイドラインが前回の「心房細動治療(薬物)ガイドライン」以来、約7年ぶりに改訂されました。

今回改訂された不整脈薬物治療ガイドラインは前回の「心房細動治療(薬物)ガイドライン」の改訂時に比べて2点、大きく変わったとされています。第1は、不整脈に対する薬物治療の目的の変化です。非薬物療法の普及もあり、現在の薬物療法は、不整脈の停止や発症予防ではなく、患者の予後やQOLの改善へと変化してきました。第2には、直接阻害型経口抗凝固薬(DOAC)の普及により、心房細動(AF)に対する抗凝固療法が大きく変遷してきたことです。AFは年々、有病率が増加しているなかで、より有益で安全な治療のために、リスク評価や抗凝固療法の対象となる疾患の定義が重要となっています図1)。

図 1不整脈薬物治憲における旧改訂時と現在の違い 
1 .ガイドライン作成の背景(わが国における薬物治療の現状)

全般及び第5章(心房細動)の改訂点として、表1に示すような項目が挙げられます。

表1不整脈薬物治療ガイドライン (2020年改訂版)改訂点(全般および第5章を中心に)※一部抜粋

推奨クラスとエビデンスレベルについては、これまでのAHA/ACC/HRSのガイドラインを準拠した推奨クラス分類・エビデンスレベルに加え、Minds推奨グレード・Mindsエビデンスレベルが追加されました。
そして、第5章の「心房細動」の項目では、診断および治療の基本方針という項目が追加され、心房細動の検出について、推奨とエビデンスレベルが追加されています。
また、包括的管理の項目では、6つの臨床的問題点が提示され、5段階の治療ステップ、チーム医療、併存疾患の管理の重要性についても言及されています表2

表2不整脈薬物治療ガイドライン (2020年改訂版)~全般および第5章を中心に~改訂点(全般・心房細動の診断・包括的管理)※一部抜粋

抗凝固療法の選択と抗凝固療法中の管理

直接阻害型経口抗凝固薬の普及により、抗凝固療法は大きく変遷したことから、2013年版から様々な点が改訂されました。2013年版では弁膜症に分類されていた人工弁置換(機械弁・生体弁)は、今回の改定で生体弁を用いた人工弁を「非弁膜症」として扱うことになりました。
また、抗凝固療法の対象となるCHADS2スコアに含まれていないその他のリスクは、これまで心筋症、年齢65歳以上74歳以下、血管疾患の3つでしたが、今回「持続性・永続性心房細動」、「低体重」、「腎機能障害」、「左房径(>45mm)」の4つが追加されました。そのほか、DOACの推奨度、INRの至適範囲が変更されました。
また、抗凝固療法中の凝固検査についての言及や、出血のリスク評価、DOACとワルファリンの選択についても言及されています表3)。

:表3不整脈薬物治療ガイドライン (2020年改訂版)~全般および第5章を中心に~改訂点(生体弁の定義・抗凝固療法) ※一部抜粋

抗凝固療法中の管理として、周術期の抗凝固療法の記載がより充実しました。抜歯後、消化管内視鏡、外科手術、心臓デバイス植込手術、アブレーション時についてそれぞれ推奨とエビデンスレベルが記載されています。
また、虚血性心疾患合併心房細動の抗血栓療法の項目が新規で設置され、DOACの複数の臨床試験のエビデンスをもとに、推奨度および抗血栓療法の推奨期間がまとめられています。
加えて、出血時の対応についても新たにフローチャートが作成され、休薬・再開についても言及されました表4)。

不整脈薬物治療ガイドライン (2020年改訂版)~全般および第5章を中心に~
改訂点(抗凝固療法中の管理)※一部抜粋

本ガイドラインで注目されるいくつかの改訂点について、
第5章の心房細動を中心にご紹介しました。
先生方の日常診療にお役立ていただければ幸いです。

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